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【声明】 橋下氏と「大阪維新の会」による独裁政治、教育の政治的支配をねらい、子どもたちを競争にかりたてる「教育基本条例案」、ものいわぬ職員づくりねらう「職員基本条例案」に、全国の力を結集して反対しましょう
2011年11月9日 憲法会議(憲法改悪阻止各界連絡会議)

1.橋下徹前大阪府知事が率いる「大阪維新の会」は、大阪府議会などに「教育基本条例案」と「職員基本条例案」を提出し、府知事選挙・大阪市長選挙後にもその採択強行をねらっています。また橋下氏は、この2つの条例案とともに「大阪都」構想を掲げ、大阪の府・市政をファッショ的に牛耳ろうとしています。 
憲法会議は、憲法がかかげる学問と教育の自由、地方自治、自治体労働者の働く権利を根本から蹂躙するものとして、橋下派の動きに強く反対するものです。

2.「教育基本条例案」は、前文で、選挙で選ばれた知事の考えを「民意」として、教育を政治が支配することを掲げています。「基本理念」では、「愛国心および郷土を愛する心」「世界標準で競争力の高い人材」「互いに競い合い自己の判断と責任で道を切り開く人材」を育てるとし、「個人の尊厳を重んじる教育」を敵視します。学力テスト結果で学校別に競わせ、府立高校の学区の撤廃、3年連続定員割れの府立学校の廃校など、学校と子どもたちの序列化と競争を煽ります。また、保護者の権利について、「保護者は、教育委員会、学校、校長、副校長、教員及び職員に対し、社会通念上不当な態様で要求等をしてはならない」などと攻撃します。
これらの推進のために、知事による教育目標の設定、校長・副校長の公募、教職員に対する5段階の人事評価を押しつけようとしています。それは相対評価によって5%は最低のD評価とし、D評価が続けば免職にすることまで規定しています。これらのねらいは、上意下達の制度化と、職務命令・処分・免職の脅しで、知事いいなりの学校と教職員を作ることです。
「教育基本条例案」は、子どもの発達と教育に権力者が思いのままに介入し、学問・教育の自由という憲法と教育の条理を踏みにじるものであり、地方教育行政法、地方公務員法だけでなく、「改正」教育基本法にも反するものです。教育の目的は「人格の完成」であり、特定の目的に資するための「人材育成」ではありません。教育は、日本国憲法や子どもの権利条約にもとづき、教職員と子どもたちの人間的なふれあいを通じて営まれなければなりません。「国家のための教育」とされた戦前の教育への逆戻りを許してはなりません。

3.「職員基本条例案」は、地方自治体の幹部公募制を取り入れて、時の首長の意のままになる幹部採用を可能にし、さらに職員の一定数を相対評価で必ず最下位評価にし、2年連続で最下位評価となった職員を免職できるようにしています。これらは、財界と民間大企業主導の新自由主義的な利益最優先の政策をすすめるために、ものいわぬ職員づくりをねらい、憲法15条「公務員は全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」を踏みにじるものです。

4.橋下氏と「大阪維新の会」はこれまでも、過半数を得た府議会で「君が代強制条例」や大幅な議員定数削減を強行するなど、公約でもなかった案件を「府民感覚」と称し、ゴリ押しを重ねてきました。まさに「民意」をかざしたファッショ的独裁的政治です。
こうした橋下氏と「大阪維新の会」が、もし「成果を上げる」ようなことになれば、民主党による悪政に苦しむ国民の中にひろがっている「閉塞感」に依拠して、現在の政治状況を反動的に打開しようとする衝動を刺激する危険も考えられ、日本の民主主義の根本にかかわる重大な問題ともなります。
それだけに橋下氏による「独裁=ハシズム=v、「教育基本条例案」、「職員基本条例案」などの強行を危惧する広範な世論がおきつつあり、批判もひろがっています。
憲法会議は、橋下氏らの暴挙が大阪府のみならず、全国にも広がることを阻止するために、大阪府民と全国の国民が、民主主義擁護の立場で、共同して、反対するためにたちあがることを呼びかけます。



国会法等の「改正」に反対する法学者声明
2010年5月20日

 民主、社会民主、国民新の与党三党は、5月14日、国会法等の「改正」案を野党側の反対を押し切って国会に提出した。

 民主党は、2009年の総選挙のマニフェストで「鳩山政権の政権構想」の5原則の冒頭の2つに、「官僚丸投げの政治から、政権党が責任を持つ政治家主導の政治へ」と「政府と与党を使い分ける二元体制から、内閣の下の政策決定に一元化へ」とを掲げ、衆議院の比例定数の80削減を盛り込んだ。また、この夏の参議院選挙のマニフェストには参議院の定数40削減を盛り込む方針を決めた。これらにより選挙制度や議会制について大がかりな改変が構想されている。その後、民主党は11月12日、「国会審議の活性化について」と題する文書を発表した。その概要は以下の通りである。

  @政治家同士の議論を阻害している政府参考人制度を廃止する。
  A内閣法制局長官を「政府特別補佐人」から削除する。
  B各委員会において、政治家同士による審議の場とは別に、行政公務員、各界有識者、市民団体、業界団体等から広く意見を聴取する新たな場を設置する。
  C質問通告の規則を改善・厳格化する。
  D政治主導体制を強化するため、大臣政務官を増員する。

 これを受けて、民主、社会民主、国民新の3党は、2009年12月28日、幹事長・国対委員長会談を開き、上記@からDの内容を盛り込んだ「国会審議の活性化のための国会法等の一部改正について(骨子案)」(以下、「骨子案」と略)を了承した。

 私たちは、将来提起されてくることが予想される議員定数削減も、国民主権と議会制民主主義にとって重大な問題を惹起するものと考えるが、このたび国会に提出された国会法や議院規則などの改定は、必ずしも国会審議の活性化に資するものではなく、むしろ立憲主義の意義を弱め、国民主権の原理に背馳し、憲法が予定する議会制民主主義の形骸化を導くおそれがあるものと考え、この喫緊の問題についての声明を発表し、その危険性を世に訴えることとした。

 1.政府参考人制度の廃止について

 国会の審議において、議員同士あるいは議員と大臣・副大臣・政務官との間で議案について十分な議論を尽くすことが重要であるのは、国会が国民主権のもとでの「国権の最高機関」であることから当然のことである。その点では、現行の「政府参考人制度」(衆議院規則45条の3、参議院規則42条の3)は、議長の承認や委員会が必要があると認めるときに答弁できるとしているにすぎないのであって、現状でも政府参考人に頼らずに政治家同士で審議をすることは十分可能である。

 それにもかかわらず、「行政に関する細目的又は技術的事項について審査又は調査を行う場合において、必要があると認めるとき」に「その説明を聴く」としている政府参考人の制度を廃止することは、むしろ国会における審議の質を低下させ、そればかりか、憲法62条が規定する国政調査権を不当に制限するものである。

 上記の「骨子案」では、政治家同士による審議の場とは別に「意見聴取会」を設けるとしているが、そのような場の設定が国会での審議の充実に資する保障はない。「行政に関する細目的又は技術的事項について審査又は調査」は、法律案などの議案の審議のなかで行われることでこそ、現状の問題点の検証や改革の必要性の検討に役立つのであって、制定される法律の質を確保する上でも重要である。そのような審査や調査を「意見聴取会」に切り分けて集めてしまうことは、かえって審議を散漫なものにしてしまいかねない。この「意見聴取会」が大臣等の出席義務なしに開催される場合は、なおさらである。

 また、政府参考人制度の廃止は、官僚による行政運営を、国会とりわけ野党議員の追及からかばい、ひいては政府・与党の政権運営に対する監視や批判の手がかりを国会から奪うことにつながる。その点でも国会の審議機能に低下をもたらす。

 2.内閣法制局長官の「政府特別補佐人」からの削除について

 「骨子案」は、国会法の69条2項が定める「政府特別補佐人」から内閣法制局長官を削除して、「意見聴取会」で「意見を聴取」する「行政機関の職員」の中に内閣法制局長官を含めるとしている。

 内閣法制局は、「閣議に附される法律案、政令案及び条約案を審査し、これに意見を附し、及び所要の修正を加えて、内閣に上申すること」や「法律問題に関し内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し意見を述べること」(内閣法制局設置法3条1号・3号)などの事務をつかさどり、内閣法制局長官は、閣議の陪席メンバーである。こうした法律問題の専門的部署として内閣の法律顧問的役割を果たし、政府の憲法・法律解釈の統一性を確保するべき内閣法制局の長官を、「意見聴取会」への出席は可能になるとはいえ、国会での法案審議の場から排除することは、国会審議自体はもとより、政府による憲法運用全般にも大きな歪みをもたらすことが危惧される。

 法案の審議の場では、その合憲性や従来の政府見解との整合性が問題とされる際には、政府の憲法解釈が問われる場面がしばしば現れる。そのような場面で、「政治主導」を理由にして首相や閣僚が、その時々の政治判断で憲法解釈を行い、それによって政府の憲法解釈やその統一見解がなし崩し的に変えられてしまうならば、立憲主義国家の憲法運用のあり方としては、重大な問題を生むことになる。とりわけ、憲法9条に関する政府の憲法解釈が安易に変更されることの影響ははかり知れない。

 3.憲法9条の重大な危機

 内閣法制局長官の排除に対する小沢一郎民主党幹事長の意欲は、並々ならぬものがある。同氏は自由党時代の2003年5月には、「憲法や条約の有権解釈の権限を官僚の手から奪い返す」として、「内閣法制局設置法を廃止する法律案」を国会に提出している。また、同氏は、「国連の平和活動は国家の主権である自衛権の行使を超えたもの」であり、自衛隊による国連の平和活動への参加は、「たとえそれが武力の行使を含むものであっても、日本国憲法に抵触しない」という持論を持っている。こうした独特の憲法解釈は、「(国連憲章上の)集団安全保障に関わる措置のうち憲法9条によって禁じられている武力の行使、または武力の威嚇にあたる行為については、我が国としてこれを行うことが許されない」(1994年6月13日、種田誠衆院議員に対する大出峻郎内閣法制局長官の答弁)とする内閣法制局の憲法解釈と鋭く対立するものである。

 鳩山由起夫首相も、2009年11月2日の国会で、集団的自衛権の行使を禁じているこれまでの政府の憲法解釈を当面踏襲する考えを明らかにしたが、その2日後の11月4日には、憲法解釈について、「内閣法制局長官の考え方を金科玉条にするというのはおかしい。その考え方を、政府が採用するか採用しないかということだ」と述べ、政府に決定権があると強調した。また、平野博文官房長官も同日の記者会見で、「鳩山内閣以前の内閣での解釈は、法制局長官が判断をしてきている。鳩山内閣では政治家が政治主導で、内閣において責任を持って判断する」と述べた。これは、集団的自衛権の行使は違憲とする内閣法制局が長きに渡って維持してきた憲法解釈を、政府の判断で変更することもありうるということである。

 明文改憲路線を掲げた自民党の安倍晋三首相が、2007年の参院選の敗北の結果を受けて退陣を余儀なくされたことを目の当たりにした民主党は、2009年総選挙では、2005年の「憲法提言」に込めた改憲の方針を鮮明にすることなく勝利した。このように明文改憲が提起しづらい政治状況が生まれたなかで、解釈改憲が現実的な路線として追求されようとしている。そうした解釈変更による9条改憲が容易な国会づくりが、内閣法制局長官の「政府特別補佐人」からの除外によって目指されているといえる。

 国民主権の観点からするならば、本来の意味での政治主導とは、国会をすべての議員が国民の代表としてその力能を発揮できるものとする必要がある。そして、内閣は、そのような国会に対して連帯して責任を負い、そうした内閣の責任を実効的あるものにするために行政機関に対する国会による監視と統制を確保することを基軸にして、国会と内閣の関係は構想されるべきものである。与党三党による国会法等を改正する「骨子案」は、そのような国民主権に基づく本来の意味での政治主導の実現には程遠く、「政治主導」を謳い文句にしつつも、政権党なかんずくその執行部による権力の独占、議会軽視、官僚組織の囲い込み、憲法運用の不安定化、政府解釈の安易な変更による憲法の歪曲をもたらしかねないものである。

 私たちは、このような国会法等の改正に強く反対し、法案の撤回を求めるとともに、国会と内閣の運営を、国民主権と議会制民主主義に立脚したものとするよう広く呼びかけるものである。

<賛同者>

愛敬浩二(名古屋大学教授) 足立英郎(大阪電気通信大学教授) 石埼学(龍谷大学教授) 稲正樹(国際基督教大学教授) 井端正幸(沖縄国際大学教授) 植松健一(島根大学准教授) 植村勝慶(國學院大學教授) *浦田一郎(明治大学教授) 浦田賢治(早稲田大学名誉教授) 大野友也(鹿児島大学准教授) 岡田章宏(神戸大学教授) 奥野恒久(室蘭工業大学准教授) 小栗実(鹿児島大学教員) *小澤隆一(東京慈恵会医科大学教授) 戒能通厚(名古屋大学名誉教授) 加藤一彦(東京経済大学教授) *上脇博之(神戸学院大学教授) 北川善英(横浜国立大学教授) 木下智史(関西大学教授) 清田雄治(愛知教育大学教授) 久保田貢(愛知県立大学准教授) 久保田穣(東京農工大学名誉教授) 倉田原志(立命館大学教授) 小竹聡(拓殖大学教授) *小林武(愛知大学教授) *小松浩(立命館大学教授) 近藤真(岐阜大学教授) 佐々木光明(神戸学院大学教授) 笹沼弘志(静岡大学教授) 清水雅彦(札幌学院大学教授) 新屋達之(大宮法科大学院大学教授) 隅野隆徳(専修大学名誉教授) 芹沢斉(青山学院大学教授) 高橋利安(広島修道大学教授) 竹森正孝(岐阜大学教授) 只野雅人(一橋大学教授) 田中則夫(龍谷大学教授) 田村和之(龍谷大学教授) 塚田哲之(神戸学院大学教授) *中島茂樹(立命館大学教授) 長岡徹(関西学院大学教授) 中里見博(福島大学教員) 中村浩爾(大阪経済法科大学名誉教授) 永山茂樹(東海大学教員) 名古道功(金沢大学教授) 成澤孝人(信州大学准教授) 新倉修(青山学院大学教授・弁護士) 丹羽徹(大阪経済法科大学教授) 前野育三(関西学院大学名誉教授) 前原清隆(日本福祉大学教授) 松宮孝明(立命館大学教授) 水島朝穂(早稲田大学教授) 三宅裕一郎(三重短期大学准教授) 三輪隆(埼玉大学教員) 村田尚紀(関西大学教授) 本秀紀(名古屋大学教授) 元山健(龍谷大学教授) *森英樹(龍谷大学教授) 諸根貞夫(龍谷大学教授) 山内敏弘(一橋大学名誉教授) 山口和秀(岡山大学名誉教授) 山崎英壽(日本体育大学講師) 若尾典子(佛教大学教授) *渡辺治(一橋大学名誉教授) 渡邊弘(活水女子大学准教授)*和田進(神戸大学教授)他5名                                           以上71名 (*は呼びかけ人)


【声明】改憲手続法はキッパリ廃止を。あらゆる改憲策動を打ち破ろう
2010年5月18日 憲法改悪阻止各界連絡会議(憲法会議)

 本日、改憲手続法(日本国憲法の改正手続に関する法律)が「施行期日」を迎えました。この法律は、改憲を掲げた当時の安倍内閣のもとで自公与党が成立させたものです。改憲手続法は、公布から3年の間に、投票年齢を18歳からとすることや、公務員の国民投票運動の自由を保障するために「必要な法制上の措置」をとることを国会に義務づけ、参院では、18項目もの付帯決議がつけられていること自体、論議もつくさず、改憲の条件を整えるため成立を急いだことを示すものです。にもかかわらずこれまで、それらについての議論がまったくなされていないのは、こうした改憲の動きを危惧した改憲反対世論が草の根に広がり、国民がこのような法律を望んでいないことの反映にほかなりません。改憲手続法はキッパリと廃止するしかありません。

 ところが、自民党やつぎつぎ名のりをあげる「新党」は、この法律の「施行」を明文改憲の動きを再起動させる手がかりにしようと、改憲案の作成や集会の開催など、新たなキャンペーンを開始しています。民主党出身の参議院議長が、参院憲法審査会の始動を促す動きもあります。

 また、鳩山内閣は、こうした明文改憲の動きとは別に、解釈改憲を極限にまでおしすすめるため、内閣法制局長官の国会答弁禁止、官僚や学識経験者らの意見聴取は法案審議と切り離した別の場でおこなうこと、衆院80参院40の議員比例定数の削減などの「国会改革」を推進しようとしています。これらは国民の意思を国会から締め出し、内閣が、国会の統制を受けることなく、憲法解釈の変更も含めて強大な権限をふるう国家体制をつくろうとするものです。普天間基地移設問題や消費税増税の論議などにみられるように極限に達した日米軍事同盟優先、大企業奉仕の政治と国民との矛盾を抑えこむためであることは明らかです。

 明文改憲、解釈改憲のどちらであろうと、改憲の動きを絶対に許すわけにはいきません。私たちは今こそ、国民のなかに憲法を生かす運動を広げ、憲法改悪に反対する揺るぎない多数派となり、改憲手続法など発動する余地をなくすことをめざし奮闘するものです。



「新テロ特措法改正法案」の再可決・成立に抗議する
2008年12月12日 憲法改悪阻止各界連絡会議

 1、政府・与党は12月12日、参議院でいったん否決された「新テロ特措法改正法案」を、衆議院での再可決によって成立させました。国民が支持していない憲法違反の法案を、憲法が例外としている再可決で成立させた暴挙に対し、怒りを込めて抗議します。再可決に手を貸した民主党も、厳しい批判を免れることはできません。

 2、国会審議を通じて改めて浮き彫りになったのは、戦争でテロはなくせないという事実です。参考人質疑でペシャワ−ル会の中村哲代表は、アフガンへの自衛隊派遣は「有害無益、百害あって一利なし」と言い切りました。海外派兵の継続は、罪もないアフガン市民の殺戮を重ねる米の戦争に加担し、一体となって海上補給活動を続けることです。「イラクでの自衛隊の空輸活動は違憲・違法」とした名古屋高裁判決の趣旨に反するものでもあります。大義なき派兵の継続は、断じて許されません。

 審議のさなか、田母神俊雄・航空幕僚長(当時)が、日本の侵略戦争や植民地支配を正当化し、集団的自衛権の行使を禁じる現行憲法を攻撃した文を懸賞論文に応募していたことが判明しました。田母神氏は参考人質疑でも、集団的自衛権の行使のために「憲法を改正すべきだ」と重ねて明言しました。また、統幕学校長時代、教育課程を見直し、村山談話、政府見解にも反する特異な歴史観、国家観を注入する教育体系を作っていたことも明らかになりました。こうした動きは、自衛隊の海外派兵の拡大と軌を一に進められていたことが示すように、アジア・太平洋戦争の反省の上に築かれた憲法の平和主義を大きく揺るがすものです。

 今国会で、民主党は自民党と「対決」の姿勢を演じつつも、法案には「反対はするが成立させる」態度を貫きました。一連の自民・民主の論戦を通じて明らかになったのは、両党が日米同盟堅持・海外派兵推進・改憲の基本路線を共有しているという重い事実です。民主党が「恒久法」制定や憲法審査会の始動に反対しないことを表明し、自らが政権をとれば「政府の憲法解釈を変更する」と答えたことは、改憲大連立の危険を孕んだ動きであり、今日の2大政党制の本質を改めて示したものです。

 3、憲法会議は安保破棄中央実行委員会、国民大運動実行委員会とともに「新テロ特措法改正法案」阻止の国会行動を呼びかけ、法案阻止に力を尽くしてきました。

 安倍、福田氏の政権投げ出しは、アメリカいいなりに海外派兵を進め、改憲をめざす自民党政治が完全に破綻していることを示しました。そこまで追い込んだのは、私たちのたたかいと国民世論であり、戦争より対話を求める世界の大きな流れです。

 これらのことに確信をもち、私たちは改めて自衛隊の海外派兵の即時中止、撤退を求めるとともに、改憲派の巻き返しを許さず、その根を絶つために解散・総選挙をたたかいとり、勝利を目指して全力をあげます。同時に、「恒久法」制定を阻止し、憲法9条を守るため、国民過半数の支持を得る本格的な取り組みをいっそう強めるものです。                                                 以上



ドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」の上映妨害は許されない(談話)
      2008年4月14日                   憲法会議事務局長  長谷川英俊
                                      事務局長  平井  正

 ドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」が自民党国会議員らの不当な圧力、右翼の妨害等で上映中止に追い込まれています。

  自民党国会議員で構成する「伝統と創造の会」は、「反日映画」に文化庁が所管する独立行政法人・日本芸術文化振興会が750万円を出したのは問題だとして、一般公開前の上映を文化庁に求め、国会議員向けの試写会を開催させました。この圧力を契機として、右翼等の妨害が強まり、今月の公開を予定していた東京、大阪の5館が上映を中止しました。

  憲法21条が保障する、「言論・表現の自由」は、民主主義を支える根幹にほかなりません。このようなことがまかりとおるなら、表現の自由と国民の知る権利は、政権政党や右翼が許容する範囲に封じ込められ、死滅してしまいます。1月、日本教職員組合の教研集会全体会が右翼の妨害を口実としたホテルに拒否されて開催できなくなり、11日には最高裁が、自衛隊のイラク派兵反対ビラを自衛隊官舎に配布した市民を有罪に処しました。これらの流れをふまえるとき、今回の上映への圧力、妨害問題を軽視することは、いっそうできません。日本弁護士連合会を始め、広範な団体が厳しく批判するのは当然です。 

  今回、助成金の支出を問題視した人たちは、「伝統と創造の会」や「日本会議国会議員懇談会」等、侵略戦争を反省せず、戦前への復古を狙い、改憲をめざす右翼的な団体に所属する議員です。その一人、自民党の有村治子参議院議員は国会(3月27日)で、助成承認にかかわった専門委員の一人が、「憲法9条をめぐって護憲という立場で」活動をしている「映画人九条の会」のメンバーだから、「公正な立場で審議されず」助成された、と攻撃しました。同氏は日本会議国会議員懇談会事務局次長の任にあります。国会議員の憲法尊重擁護義務を放棄し、憲法9条改悪反対の一点でアピール賛同運動を展開し、広範な国民の支持を得ている「九条の会」に不当な攻撃をすることは、新憲法制定議員同盟などの「九条の会」攻撃と軌を一にするものであり、今回の問題が侵略戦争賛美、憲法改悪策動と深く結び付いたものであることを示しています。

  最近の読売新聞などの世論調査でも明らかなように、国民の多数の世論は「改憲反対・9条守れ」にあります。憲法会議は、憲法21条への重大な侵害や、憲法擁護の取り組みへの攻撃など、憲法をふみにじるあらゆる策動に反対するとともに、広範な人たちと力を合わせて、憲法を守り生かす取り組みをいっそう強める決意です。

以上



改憲手続き法の成立にあたって

2007年5月14日  憲法改悪阻止各界連絡会議 
 政府・与党は5月14日の参議院本会議で、改憲手続き法案を与党の賛成で可決・成立させました。

 私達は、憲法における国民主権の行使にかかわる重要法案を、参議院では中央公聴会も開かず、審議もつくさないままに数の力で採決した暴挙を認めるわけにはいきません。とりわけ国民が最低投票率を定めることなどを求めるなか、これを踏みにじって強行したことを許すことは出来ません。こうした採決日程に合意し、法案成立に加担した民主党の責任が免れないことも当然です。心からの怒りを込め、厳しく抗議するものです。

 この間の憲法改悪反対・九条守れの多様な運動と結んで、改憲手続き法案反対の運動は世論を大きく変え、今後のたたかいの展望を切り拓いてきました。憲法60年の2007年5・3記念日行動は、日比谷集会に6000人、パレードに7000人が参加したのをはじめ、私たちの調べでは、全国で3万5千人が行動に参加し、その数は、昨年をはるかに上回っています。対照的に、改憲勢力が鳴り物入りで開いた「新しい憲法を作る国民大会」の参加者が700人であったことは、国民世論の反映にほかなりません。

 このようななかで改憲勢力は、自・公・民合作の共同改憲路線を目指しましたが、改憲手続き法案は結局、与党と民主党が個別に提案せざるを得ず、端緒で破綻せざるを得ませんでした。この背景にあるのも、この間の世論調査がくっきりと示した改憲派の減退、改憲反対派の増加という国民世論の変化です。

 しかし安倍内閣は、改憲手続法の成立を契機に、新憲法制定集会を全国で開催し、改憲世論を一気に盛り上げ、9条改憲の多数派形成をねらっています。また、夏の参議院選挙で改憲を争点にし、憲法審査会の設置を経て、改憲原案の事実上の審議を急ごうとしています。また軽視できないことは、先日の日米首脳会談で、安倍首相が集団的自衛権の行使を憲法改訂前にも可能にすると対米公約し、「安全保障の法的基盤の再構築に関する有識者懇談会」や自民党の「集団的自衛権に関する特命委員会」に早期に結論を取りまとめさせようとしていることです。

 安倍内閣の憲法九条破壊・改憲をめざす強権政治は、今後、矛盾をますます広げずにはいられません。憲法9条を変えてアメリカのために戦争をする国づくりは、根本において国民の願いに反し、アジアと世界の平和の流れに反するからです。

 いま国民は、朝日新聞の世論調査が示すように、安倍政権の下で歴史の書き換えや戦争美化とともに進められる改憲に警戒心を高めています。その流れはさらに広がろうとしています。

 憲法会議は、「憲法改悪反対・9条守れ」のゆるぎない声を国民の多数にし、発議を断念させ、改憲を阻止するために、憲法学習を強め、職場・地域に「九条の会」を無数につくり、草の根からの共同の発展をめざして全力をあげる決意です。



日本国憲法施行60周年に当たって

2007年5月3日  憲法改悪阻止各界連絡会議 

 日本国憲法は本日、施行60周年の「憲法記念日」をむかえました。

60年という長期にわたり、この憲法が一字一句変えられることなく、みずみずしい生命力をもって今日を迎えたことを、私たちは心から歓迎し、かつ誇りとするものです。それは、日本国憲法の先駆的・先進的内容と、これを支える国民の「不断の努力」によってもたらされたものであるからです。

 日本国憲法は、戦争違法化をめざす世界の流れの先端をいく徹底した平和主義において先駆的であるだけではありません。信教の自由、言論・表現・集会・結社の自由や人身の自由など具体的で豊富な自由権、生存権や教育を受ける権利、働く権利などの社会権も、国際社会のなかではきわだって先進的なものです。それは、日本国民が大きな犠牲をこうむっただけではなくアジアと世界に多大な惨禍をもたらした第二次世界大戦と、人権も民主主義も徹底して抑圧しつくした戦前の絶対主義的天皇制への深い反省から生みだされたものです。私たちは、この戦前の歴史をぬきにして、日本国憲法60周年の意義を語ることはできません。

 ところが今日、こうした過去の歴史から何一つ学ぼうとせず、過去の戦争が侵略戦争であることを認めることすら頑迷に拒否し、日本が世界に誇る第9条を中心に、この憲法を改悪しようとする動きが、4、5年先のタイムテーブルすらもって、かつてない規模と広がりをもって展開されています。それは、自民党、民主党における改憲案の作成作業、これを国民に押し付けるための「北朝鮮脅威論」、「おしつけ憲法論」などのキャンペーン、国民投票のハードルを下げることをねらいとした改憲手続き法案強行の画策などにあらわれているとおりです。この動きが、解釈・明文の両面から集団的自衛権の行使を可能とし、世界のどの地域であれ、迅速に部隊を派遣して先制攻撃をおこなうというアメリカの世界戦略に参加し、日本を再び「海外で戦争をする国」にしようとするものであることは明らかです。しかし、それらは日本国民との矛盾を深め、世界の大きな流れに逆行するものでしかありません。

日本国民のなかには、世代を超えて平和へのエネルギーが大きく存在しています。それは、ほとんど世論調査において、日本国憲法が戦後日本の平和的発展に貢献したとする共通の認識が示され、とりわけ9条を変えることに反対する世論が、これを変えるべきとする世論を上回り、その差が年々拡大していることにあらわれています。とりわけ、2004年に発足した「九条の会」は、そうした世論づくりの力強い牽引車になっています。わずか3年足らずのあいだに、「九条の会」アピールに賛同して結成された地域・職場・学園・分野の      「会」は6000を超えて、なお新しい峰に向けて発展しつづけていることに見られるように、この国民のエネルギーはさらに大きく広がる条件をもっています。

同時に、戦後発足した国連の戦争違法化の思想は、各国の憲法にもさまざまな形で反映され、各国の平和運動の日々の発展をもたらしています。そしていまや、そうした個々の国による平和に向けた努力は、東南アジア友好協力条約(TAC)、アフリカ連合(AU)、南米共同体(CSN)など、地域の共同した取り組みへと発展しつつあります。朝鮮半島の非核化の問題も、紆余曲折を経ながら、6カ国協議の枠内でねばり強い話し合いによる解決をめざす努力が重ねられています。これはアメリカのイラク戦争が泥沼の殺し合いをつづけ、世界中の非難をあびていることとまったく対称的といわなければなりません。

私たちは、国民の自由も人権も踏みにじって、再び日本を「海外で戦争する国」にし、世界から孤立化して歴史逆行への道をあゆませることを絶対に許すわけにはいきません。

 私たちは、改憲キャンペーンにたいする反撃を徹底して行うとともに、日本国憲法の先駆的・先進的内容の学習・宣伝をさらに強めます。同時に、「九条の会」の発展のために力をつくすことをはじめとして、改憲阻止の広大な共同を実現させ、日本国憲法、とりわけその9条を21世紀の日本と世界に輝かすために奮闘する決意を、日本国憲法施行60周年にあたりあらためて表明します。



小泉首相の靖国神社参拝に怒りをこめて抗議する


2006年8月15日   憲法改悪阻止各界連絡会議

 小泉首相は本日、アジア諸国はもちろん保守勢力をも含む日本国民の批判や抗議を無視し、首相就任後6度目の靖国神社への参拝を強行した。過去の侵略戦争を反省し、不戦の誓いを新たにすべき8月15日を選んでこの暴挙をおこなった小泉首相に、私たちは強い憤りをもって抗議する。

 靖国神社は、天皇のために戦って死んだものを祀る特殊な神社であり、戦前は国民を侵略戦争に駆り立てる精神的支柱としての役割を果たした。戦後も日本の侵略戦争を美化し、この戦争を「アジア解放のための聖戦」として描き出す宣伝センターの役割を果たしてきた。とりわけA級戦犯まで合祀し、「国事に殉じた者」として美化することは戦後国際社会の出発点を否定するものである。同時にそれは、原爆投下を含む多大な犠牲を代償に国民が手にした日本国憲法の恒久平和主義の原点に挑戦するものである。

 小泉首相ら公人の参拝は靖国神社のこうした役割を肯定し、お墨付きを与えるものにほかならない。そのことによって小泉首相の暴挙はアジア諸国の憤激をよび起こし、日本のアジア外交を破たんさせている。

 小泉首相は、首相個人の「内心の自由」を唯一の口実にその行為の正当化をはかろうとしている。しかし、これまでの大阪高裁判決などが示すように、首相の地位にある者の靖国神社公式参拝は、明らかに政教分離の原則を踏みにじって特定宗教を支援するものとならざるをえない。それは、靖国神社が合祀に反対する遺族の合祀取り下げ要求をいっさい拒否していることにあらわれているように、逆に国民の信教の自由を侵害する結果をうみだしている。

 小泉首相は、自民党改憲案の作成など、戦後初めて憲法改悪にむけた具体的なレールをしいただけではなく、憲法破壊を極限にまでおしすすめた。私たちは、憲法改悪を許さず、第9条を守りぬくとともに、いかなる形であれ小泉政治の継承を許さないことによって、今回の暴挙に歴史の審判を下す決意を表明する。



改憲手続法案の国会提出に抗議し撤回を求める

2006年5月26日  憲法改悪阻止各界連絡会議

 自民・公明の与党と民主党が、本日、国会発議と国民投票という憲法改悪のための手続法案を、あいついで国会に提出しました。国民投票法はいらないとする国民世論に背を向けた法案提出に、私たちは強く抗議し、法案の撤回を求めます。

 日本国憲法の公布いらい、憲法第九六条に改定の規定があるにもかかわらず国民投票法が制定されなかったのは、法案推進勢力が言うような国会の怠慢でも、ましてや、国民の主権行使の機会を奪ってきたものでもありません。国民の多くが第九条を守り生かすことを望み、国民投票法を必要としないとしてきたからです。

 しかし昨年、自民党が「新憲法草案」、民主党が「憲法提言」を発表したことにみられるように、いま憲法改悪に向けた動きはかつてなく強められています。アメリカのおこなう海外での戦争に参加することをめざし、その最大の障害となっている第九条を取り除こうとするものであることは明らかです。そうした「海外で戦争する国」づくりのために、いま開かれている国会では教育基本法改悪や共謀罪新設が企てられ、さらに米軍再編にともなう基地強化が全国の自治体におしつけられようとしています。

 しかし、各種世論調査結果が示すように、日本国憲法第九条は広く国民の支持を得ているばかりでなく、国際社会からも世界の宝として日本がこれを堅持することへの期待が高まっています。九条改悪の実現をめざす改憲手続法案はこの国民の願いと国際社会の期待に反するものです。しかも、提案されている改憲手続法案は、国民の反対を押し切って九条改憲を国民投票で成立させるため、改憲案に関する公正な論議の妨げとなる憲法改正広報協議会の設置や、最低投票率の規定を設けないなどもっとも少ない国民の賛成でも改憲が成立するためのさまざまな仕組みなど、国民多数の意思を反映することができないきわめて不公正なものとなっています。

私たちは、この改憲手続法案を絶対に許すことはできません。憲法改悪のねらいを学習し広げることと結びつけつつ、改憲手続法案の廃案をめざし全力をあげて奮闘することを表明します。